イザカガ妄想劇場03

『ファーストコンタクト(?)〜食べ物編〜』


初めての台風体験から数日後、イザークがアスハ邸に帰ってくると、キッチンの方向からアスランが顔を青くして歩いてきた。

イザ「???キサマ、具合でも悪いのか」
アス「(真っ青で)イヤ…そういう訳では…イヤ…やっぱり悪いのかな…」
イザ「(顔をしかめて)……キサマなんかおかしいぞ」
アス「……イザーク、俺…これから…急用出来たんで…出かけてくる……」

アスラン、ふらふらと玄関を目指す。

イザ「おいっ、大丈夫なのかっ」

アスラン、答えず外へと出て行く。

SE:扉の閉まる音

その時、キッチンからエプロン姿のカガリとメイドがやってくる。
カガリ、きょろきょろとあたりを見回す。

カガ「イザークおかえり。ところでアスランは?」
イザ「今外に出かけたぞ」

カガリ、少し顔をしかめ舌打ち。

カガ「(チッ)逃げたか」
イザ「(いぶかしげに)……おい、姫?」
カガ「(表情をニコヤカに)どうした、イザーク?」
イザ「…………いや、別に」
カガ「それより今日は珍しい食材が手に入ってな。私が久々に夕食を作ったんだ。たくさんあるんだ。食べるだろ?(ニッコリ)」
イザ(夕食?姫の料理の腕はナカナカのものだとアスランが言っていたな。……しかしそのアスランは何故……いや、本当に急用だろう。しょうがない、あいつの分も食べてやるか)
イザ「ああ、そうだな。いただこう」
カガ「そうか、よかった。(後ろを向いてニヤリ)」
イザ「(悪寒を感じながら)………?????」

アスハ邸のダイニング。目の前に皿が1つ並べられる度に顔を青くしていくイザークカガリ、机の下にある手に何かを持ちながら、ニコヤカにイザークの前に座っている。

カガ「ホンットウに久々だったからな。腕によりをかけたんだ。香ばしい匂いがするだろ?」
イザ「……そ、そうだな…」
カガ「この食材は調理したことはなくってな。ちょっと不安だったけど、マーナも側にいてくれたしな、味は保障するぞ。うまそうだろ」
イザ「……そ、そうだな…」
カガ「だからタンと召し上がれ!」
イザ「…………ィャ…」
カガ「(ピクッ)…何だ?」
イザ「……嫌だと言っている!」
カガ(チッ…今日もオウムだから誘導できると思ったのに)
カガ「何でだ?何が不服なんだ?香ばしい香がしているだろ?(ニッコリ)」
イザ「(プルプルと震えながら)たしかに、香ばしい香がしている。匂いだけなら食がそそる。だがな!実態が…」

イザーク、皿の中身をビシッと指差す。

イザ「虫だと知って食べられる訳が無いだろうがあっ!(絶叫)」

イザークの目の前に並べられた皿の数々には蟻、イナゴ、ゲンゴロウ、蜂、蜘蛛、クツワムシ、蝉、そして芋虫。ご飯に混ぜられていたり、佃煮やから揚げ、芋虫にいたってはタレをつけて串焼きにしている。

カガ「食用だから食べられるぞ。わざわざ東南アジアの知り合いから送ってもらった珍しいものだぞ。残さず食べろよ(ニッコリ)」
イザ「こんな悪趣味な見かけのものが食べ物のはずがないっ!」
カガ「お前だって超奇怪で悪趣味な服を着たりしてるけど、ちゃんと人間だろ?見かけは悪くてもちゃんと向こうの人が普段食べているものなんだから大丈夫だぞ(ニッコリ)」
イザ「何故だ!何故こんな非道なことを俺に要求するんだあぁ!(絶叫・ちょっと涙目)」
カガ「ハッハッハッ。それはな、お前が私の部屋を破壊したからだよ(ニッコリ・額に青筋)」
イザ「(タジ)あ、あれは嵐のせいだ!」
カガ「ハッハッハッ、たしかに台風も原因の1つだ。だけどな。部屋が半壊した大きな原因はお前が庭に立てた『アレ』のせいだぞ(ニッコリ・青筋×2)」
イザ「(タジタジ)あ、あのときに謝っただろうが!それに嵐の中でも片付けるのを手伝っただろう!」
カガ「ハッハッハッ。片付けたのはお前だけじゃなくて私や家の者全員だぞ。威張ることじゃないだろ(ニッコリ・青筋×3)」
イザ「(タジタジタジ)そ……それに『アレ』をどけただろう。あれは重か……」
カガ「ハッハッハッハッハッハッ、お前が片付けるのがあたりまえだろう。庭に勝手にトーテムポールなんか建てやがって!(絶叫・激怒・青筋×4)」
イザ「な、なんかとはなんだ!トーテムポールを馬鹿にするな!あれはアメリカ北西沿岸部に住むネイティブアメリカンの重要な……」
カガ「ここはソロモン諸島だ!大体、台風がくる前日なんかにあんな大きいもの建てやがって、しかも私の部屋の前に!」
イザ「ちょ、丁度建てる場所があそこしかなかったからだ。他は木に隠れて全体が見えないからな。そ、それに、お前何も言わなかったじゃないか!」
カガ「あの日は夜遅く帰ったし、最近は壊れた方の窓はカーテンが閉めっぱなしだったから見えなかったんだ!」
イザ「だ、大体アスランだって同罪だ。トーテムポールを建てるのを手伝ったんだからな」
カガ「だからさっき、料理の味見をさせてたんだよ。完成しても食べさせようと思ったら誰かさんが逃がしたけどな!」
イザ「……………………」
カガ「まだ部屋の修繕費ももらってないだろ、慰謝料がわりに食べろ!」
イザ「………………………………っていうのなら」
カガ「?」
イザ「……これが料理だって言い張るのなら、お前食べてみろ!」

イザーク、真っ青な顔で虫料理の入った皿を指差す。カガリ一瞬きょとんとする。

カガ「なんだ。そんなことか」

カガリ、眉1つ動かさず、料理に手をつけていく。

SE:パリパリという音

カガ「やっぱりイナゴの佃煮が1番好きだなぁ。だけど蝉も結構おいしいんだよな」
イザ「(顔が白くなっていく)………………」
カガ「味は悪くないんだからきちっと食べろ。顔まで白い河童に変身したって許さないからな」
イザ「…………ぃゃ」
カガ「嫌もヘチマもない!えーい、これを見ろ!」

カガリ、机の下から土色のザラザラとした感触の壺を取り出す。
イザーク、それを見た瞬間仰天する。

イザ「そ、それはっ!」
カガ「お前の大事にしている土器だ。目の前の料理を完食しないと、これを研究機関に寄付するからな」
イザ「そ、そんな非道な!」
カガ「うるさい!お前も落ち武者(?)なら目の前の試練くらい乗り越えて見せろ!」
イザ「くっ……………………(意を決して)ぅぉおおおおおおおおっ!(絶叫・涙)」

イザーク、涙を流しながら料理を口に放り込んでいく。
一口食べるたびに紫・緑・オレンジなど顔色が変わっていき、最後の一口で土色になったかと思うと、椅子から体ごと転げ落ちた。

SE:バターン(倒れる音)

カガリ、倒れたイザークを見ながら溜息をつく。

カガ「こんなことが罰になるなんて、本っ当に宇宙育ちってダメダメだな。……ま、完食したしイザークなりに頑張ったということで許してやるか」

その後、再びカガリを怒らせたイザークがゲテモノを食べさせられる羽目になるのはまた別の話。

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実はこれこそココでの最初の作品にて最新作。
これから某掲示板にも同じものを貼ってきます。
(1週間以上お待たせしているので……)