SEED SAGA LINKAGE PHASE-01-1

 
 
 C.E.74.12.23、オーブ首長国連邦ヤヒロ国際宇宙空港、到着ロビー。明日のクリスマスを控え、いつもより多くの人々が行きかう中、俺はいつものように早足で歩いていた。キリッとしながらも何処か幼さを残した美しい顔、スラリとした体、アイスブルーの瞳、そして前を切りそろえ、後ろを首のあたりで切りそろえた眩くばかりの銀髪。皆足を止めたり、溜息をついたりして羨望の眼差しを向ける。(と、俺の歩く姿を部下のシホが評していたが、なんだか褒めすぎではないか?)しかし今日は、人々の中からクスクスという笑い声が含まれているのは何故だ?
イザークさん!イザーク・ジュールさん!」
 俺は足を止め、周りをグルリと見渡す。入口のほうでニッコリと笑いながら、一人の青年が手を振っている。茶色の髪と紫の瞳の青年は、彼が気づいたと分かったのか、こちらに向かって歩いてきた。
イザークさんの場所ってすぐに分かりますね。良くも悪くも皆、注目しているから」
「……出会って早々、喧嘩を売っているのか、キラ・ヤマト!」
 俺は徐々に怒りで顔が熱くなっていくのが分かった。しかしキラは、ニコニコと笑いながら会話を続ける。
「そんなことはないですよ。ただ、今日もすごく目立つ格好だなと思って。まだ、イブでもないですよ」
 俺は今、赤いスーツと緑のシャツという、非常に目立った格好をしている。緑のシャツは襟にフリルがついており、一層目立つ格好だ。自分でも少々派手には感じてはいた。
「俺は長居する気はないからな、今回は必要最低限の物しか持ってきていない。スーツケースなどかさばるだけだ」
 俺は小さ目の旅行鞄を持ち上げて見せた。
「でも別に派手なスーツじゃなくても良かったんじゃないですか?今日から3日もその格好だと街でも目立ちますよ」
「これはディアッカが『オーブのクリスマスの正装は赤いシャツと緑のスーツ』だというから、執事に頼んで用意してもらったのだが?」
(ちなみに後で聞いた話では、オーブにはそのような風習などない。そもそもオーブはキリスト教がメインではなく、色々な宗教が入り乱れている国柄で、単にクリスマスは楽しそうだというだけで開かれているパーティの一種に過ぎない。俺は、ディアッカに「ミリーから聞いたんだけど」と言われて信じてしまったのだ)
「……騙されてる」
 キラはボソッと何か小さく呟いた。
「?何だ?」
 俺が聞き取れずに聞き返すと、キラはあわてた様子で手を振り始めた。
「い、いや。何でもないですよ。さ、早くアカツキ島に行きましょう。ラクスも待っていますよ」
「ら、ラクス様が?」
 先ほどとは違う意味で少し顔が熱くなった。このキラと恋人同士だとは知っていても、憧れの人であることには変わりは無い。一時期はオーブで休養なさっていたが、今ではプラントにも頻繁に顔をお出しになる。だが、相変わらず遠いお方だ。そんな彼女と接する喜びを思えば、この間抜け面を見ることも我慢できる。
「今日は23日だけど、イザークさんもカガリもこられないから、1日早くご馳走を作るって張り切っていましたよ」
 俺から鞄を奪い取ったキラ・ヤマトは、出口に向かって歩き出した。
「そうか……」
 俺は少し照れていたのだが、気になる名前を聞いてしまい、何を話していいのか一瞬分からなくなってしまった。キラにおとなしく付いて歩いていたが、しばらくして話題に切り出した。
「…………カガリさ……カガリは?明日のパーティにも出席することは分かっているのだが」
 つい、『様』を付けたくなるが、それを口にすると怒る彼女の顔を思い出し、少し苦笑いしながら尋ねる。ためらいながらの質問だったが、キラは気にすることもなく答えてきた。
カガリも後で来ますよ。なんでもアカツキ島に野暮用があるらしいですから」
 
 


GENERATION of C.E.外伝〜


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PHASE-01 「封じられた扉」


 
[to be continue...]