SEED SAGA LINKAGE PHASE-01-11

  
  
 窓の外はすでに暗かった。
「……ん」
 ベットの上に寝ているカガリが、声を上げた。キラから借りた服に着替えて(カガリラクス様の服を着ている)、隅で椅子に座って借りた本を読んでいた俺は、側によった。
 カガリは何度か瞬きした後、ボーっとした顔でこちらを向いた。
「ここは……」
「マルキオ導師の家だ」
 簡単な治療を受けた俺達は、マルキオ導師の家にいる。幸い、カガリは一時的な気絶だけで、俺のほうが肩の骨にヒビという重症ぶりなのだが、肩が妙に熱いくらいで痛みも前に骨を折ったときよりも痛くない。(何故か二・三日で治ると断言され、今まで見たこともないような液体を骨に打たれて、別の意味で不安だ)マーナ殿などは、本土の病院へ運ばせたがったが、マルキオ様が話を聞きたいからと、ここへの搬送を支持したらしい。前の伝道所が破壊された後、一時的にとはいえ使わせてもらっている遺跡で起こった出来事を詳しく知っておきたい、というのが導師の言い分らしいが……
「……そっか、逃げ損ねたんだな……私」
 悔しそうでも悲しそうでもなく、カガリはポツリと呟いた。俺はあきれて、溜息をつく。
「お前、倒れたんだぞ。皆心配しているのに、そんなことを気にしていてどうする」
「折角……あの子に来てもらっていたんだけどな」
 あの子?協力者でもいるのか?しかし、先ほどキラやラクス様に事情を話した時、憤慨していたところを見ると、彼らが知っているとは思えない。
「謝りに、行くか」
 カガリは体を起こして、ベットから出ようとする。
「お、おい」
 そんなフラフラとした状態で、出歩いて大丈夫なのか?と止めながら聞こうとした時、扉が開いた。
「お目覚めになりましたか」
 導師がいつもと同じ穏やかな表情で部屋に入ってくる。
「ええ、大丈夫です。ご心配おかけいたしました」
 ベットに座った状態のカガリは、真剣な表情で導師の顔を見ている。
「導師」
 低い声で呟く。
「なんですか?カガリ様」
「……前代表から何かお話を聞いていませんか」
 前代表?カガリの養父でいらっしゃるウズミ殿のことか?公式の場所でもないのに、何故そのような言い方をするのだろうか。
「今は言うことができません」
 導師は『何を』とは聞かなかった。ということは、彼女が何を求めているのか分かっているのだ。導師の顔は初めてみるほど真剣な顔をしている。それほど深刻な表情なのか?
「何故です」
「その時ではありません」
「その時が来たら話してくれますか」
「場が整えば」
「……分かりました」
 カガリはいつのまにか下を向いていた顔を上げた。それは俺がいままで見たことも無い、堅い決意を秘めた目の、真剣な、引き込まれるような表情で答えた。
「整えます」
 カガリは立ち上がると、ベットの側にあった自分のドレス(ラクス様が洗濯をしてくださったらしい。ちなみに俺のスーツは普通の洗濯では藻が取れないらしく、クリーニングに出す予定が決まっている)を手に取り、そのまま部屋を出て行った。俺は部屋でじっと立っている導師を見ていると、部屋の入り口からカガリが顔を出した。
「おーい、イザーク。キラ達にあやまるからさ、一緒に来てくれ」
 その時には、崖から落ちてきた時のカガリに戻っていた。
  
 居間ではキラやラクス様、そして子供達が心配してカガリに駆け寄ってきた。それを、もう大丈夫だ、と言いながら腕を上げて表現していた。キラからはカガリはすぐに無茶をすると怒られ、ラクス様からはこれからは一人で悩まないでくださいと釘を指されていた。
 そして、予定より大幅に遅れながらも、一日早いクリスマスパーティをすることになった。ラクス様の手料理が並べられたテーブルを囲んだ、ささやかな宴だった。子供達がこの日のために練習した歌を歌い、ラクス様がその伴奏をする。キラが簡単な手品をすると、子供達は驚きの声を上げ、カガリがミュージックディスクの音楽に合わせて踊り出すと、皆でそれにつられて踊りだした。俺は、カガリ達に強制的に(この暑いのに赤の長袖長ズボンに白髭を身につけさせられて)サンタクロースにされ、プレゼントを配らされた。汗だくでついでに(痛みがないとはいえ)骨折による体力消耗でフラフラしたが、子供達がうれしそうな顔をしながら受け取っていくのを見ると、不思議と我慢が辛くなかった。そして、眠そうな子供達が出てきたとき、パーティは終わりを告げた。
  
  
[to be continue...]